湿疹・皮膚炎の漢方薬処方

湿疹などの治療にはステロイド剤が有効かつ即効性がありますが、慢性化した湿疹を治療する場合、薬に体が慣れてしまうため強くしていかなくてはなりません。
漢方治療では体質改善を行い、西洋薬の負担を減らしながら治療を行っていきます。
患部が湿っているか乾燥しているかで判断し処方を行います。

ジュクジュクと湿った湿疹・皮膚炎

実証の方で痒みが強く熱感があり、夏など暑い時期に悪化する場合は「消風散」。
虚実間証の方で口が渇き、自然発汗があり、尿量が減少している場合は「越婢加朮湯」。
虚実間証のような症状で虚証の方は「桂枝加黄耆湯」が候補になります。

乾燥している湿疹・皮膚炎

実証の処方
赤ら顔で便秘がち、のぼせや患部に熱を感じる方は「清上防風湯」、イライラしたり不安になったりのぼせ症状がある方は「黄連解毒湯」、頭や顔に湿疹が出来る方は「葛根湯」が候補になります。

虚実間証の処方
皮膚が浅黒い場合で、慢性化している方は「荊芥連翹湯」、患部にかゆみと熱を感じる方は「温清飲」。
化膿している場合で、患部が赤く便秘傾向の方は「治頭瘡一方」、強いかゆみを伴う方は「十味敗毒湯」が候補になります。

虚証の処方
疲労感や寝汗をかく方は「黄耆建中湯」、かゆみがあり分泌物が少ない方は「当帰飲子」、疲れやすく倦怠感があり腹筋が緊張しているような方は「当帰建中湯」が候補になります。
後者二つは特に高齢者にも適応します。

 

虚実証とは

その人が生まれながらに持っている要素を「証」として分類したのが虚実証です。


実証
体格・骨格がガッチリしていて、筋肉量も多く、胃腸が丈夫な方。


虚証
体格・骨格が弱々しく、筋肉量も少なく、胃腸虚弱な方。


虚実間証
体格・骨格、筋肉量が普通で、胃腸も問題ない方。


自分が実証だと思う方は「実証~虚実間証」、虚証だと思う場合は「虚実間証~虚証」と判断すると漢方薬の選択が広がります。

陰陽証とは

陽証
冷たい飲み物や寒冷刺激を好む方、風邪で熱が出た時、身体が熱くなる方


陰証
温かい飲み物や温暖刺激を好む方、風邪で熱が出た時に寒くなる方


病気の進行状況によっても陰陽の表現が使われ、症状が強く現われる進行期を陽、病状が落ち着いてきた時を陰として判断する場合もあります。

気血水とは

漢方では気と血と水がバランス良く体内を流れることで健康を保つと考えられています。 「気」は根本的な生命エネルギーを表し、心身の活力や免疫に影響します。
「血」は血液やその機能、それによって運ばれる栄養、ホルモンなどを表します。
「水」は血液以外の体液や体内の水分、リンパ液や消化液、尿や汗などの機能を表しています。


気虚…気の量が不足し活力が低下している状態


気逆…気が上へと逆流している状態


気うつ(気滞)…気の流れが悪くなっている状態


瘀血…血流が悪くなり停滞している状態


血虚…血の量や機能が低下している状態


水滞(水毒)…余分な体液が体内に溜まった状態