五十肩・肩関節周囲炎症の漢方薬処方

五十肩や四十肩は、肩関節の老化で起こる肩関節周囲炎という病気です。
急性期を過ぎると慢性化しやすくなり、ひどい時は運動障害を起こします。こういった症状では漢方薬が優れた効果を発揮してくれます。

実証の処方

少し肥満傾向にあり便秘もある方は「桃核承気湯」、うなじから首、肩、背中などがこり痛むような方は「葛根湯」が候補になります。

虚実間証の処方

急激な痛みがあった場合、まずは「芍薬甘草湯」、頭痛、発汗などの症状がある場合は「桂枝越婢湯」。
慢性化し、のぼせや肌荒れなどの症状もある場合は「麻杏薏甘湯」、治りにくい場合は「薏苡仁湯」や「二朮湯」が候補になります。

虚証の処方

慢性化しているものには「桂枝加朮附湯」、冷えのぼせがある方は「五積散」が候補になります。

 

 

虚実証とは

その人が生まれながらに持っている要素を「証」として分類したのが虚実証です。


実証
体格・骨格がガッチリしていて、筋肉量も多く、胃腸が丈夫な方。


虚証
体格・骨格が弱々しく、筋肉量も少なく、胃腸虚弱な方。


虚実間証
体格・骨格、筋肉量が普通で、胃腸も問題ない方。


自分が実証だと思う方は「実証~虚実間証」、虚証だと思う場合は「虚実間証~虚証」と判断すると漢方薬の選択が広がります。

陰陽証とは

陽証
冷たい飲み物や寒冷刺激を好む方、風邪で熱が出た時、身体が熱くなる方


陰証
温かい飲み物や温暖刺激を好む方、風邪で熱が出た時に寒くなる方


病気の進行状況によっても陰陽の表現が使われ、症状が強く現われる進行期を陽、病状が落ち着いてきた時を陰として判断する場合もあります。

気血水とは

漢方では気と血と水がバランス良く体内を流れることで健康を保つと考えられています。 「気」は根本的な生命エネルギーを表し、心身の活力や免疫に影響します。
「血」は血液やその機能、それによって運ばれる栄養、ホルモンなどを表します。
「水」は血液以外の体液や体内の水分、リンパ液や消化液、尿や汗などの機能を表しています。


気虚…気の量が不足し活力が低下している状態


気逆…気が上へと逆流している状態


気うつ(気滞)…気の流れが悪くなっている状態


瘀血…血流が悪くなり停滞している状態


血虚…血の量や機能が低下している状態


水滞(水毒)…余分な体液が体内に溜まった状態