不眠症の漢方薬処方

不眠症には、なかなか寝付けない入眠障害型と、睡眠中に目が覚めたり早く起きすぎてしまったりする熟眠障害型があります。
漢方治療では不眠自体を治療するのではなく、原因となる何らかの症状を改善し、身体と精神のバランスを整えて不眠障害が起こらないように働きかけます。

実証の処方

抑うつ、精神不安やイライラ、肋骨下の圧痛や不快感、ヘソ上の動悸などある方は「柴胡加竜骨牡蛎湯」、高血圧、のぼせ、胃のつかえ感、精神不安などある方は「黄連解毒湯」が候補になります。

虚実間証の処方

神経過敏でイライラし怒りっぽい、興奮症状やけいれんなどある方は「抑肝散加陳皮半夏」、憂鬱で不安、イライラし冷え性もある方は「半夏厚朴湯」や「加味逍遙散」が候補になります。

虚証の処方

精神不安がある場合、神経過敏でイライラし、のぼせ症状やヘソ上の動悸などある方は「桂枝加竜骨牡蛎湯」、胸苦しく眠気があり心身疲労している方は「酸棗仁湯」、胃腸虚弱で食欲不振、抑うつ傾向がある方は「香蘇散」、それに加え気力低下や貧血がある方は「帰脾湯」。
神経過敏な雰囲気がある場合で、イライラ怒りっぽく痙攣症状もある方は「抑肝散」、神経症やヒステリーがある方は「甘麦大棗湯」が候補になります。

その他

足がほてって眠れない方は「三物黄芩湯」、逆に足が冷えて眠れない方は冷え性の漢方治療を参考にして下さい。

 

虚実証とは

その人が生まれながらに持っている要素を「証」として分類したのが虚実証です。


実証
体格・骨格がガッチリしていて、筋肉量も多く、胃腸が丈夫な方。


虚証
体格・骨格が弱々しく、筋肉量も少なく、胃腸虚弱な方。


虚実間証
体格・骨格、筋肉量が普通で、胃腸も問題ない方。


自分が実証だと思う方は「実証~虚実間証」、虚証だと思う場合は「虚実間証~虚証」と判断すると漢方薬の選択が広がります。

陰陽証とは

陽証
冷たい飲み物や寒冷刺激を好む方、風邪で熱が出た時、身体が熱くなる方


陰証
温かい飲み物や温暖刺激を好む方、風邪で熱が出た時に寒くなる方


病気の進行状況によっても陰陽の表現が使われ、症状が強く現われる進行期を陽、病状が落ち着いてきた時を陰として判断する場合もあります。

気血水とは

漢方では気と血と水がバランス良く体内を流れることで健康を保つと考えられています。 「気」は根本的な生命エネルギーを表し、心身の活力や免疫に影響します。
「血」は血液やその機能、それによって運ばれる栄養、ホルモンなどを表します。
「水」は血液以外の体液や体内の水分、リンパ液や消化液、尿や汗などの機能を表しています。


気虚…気の量が不足し活力が低下している状態


気逆…気が上へと逆流している状態


気うつ(気滞)…気の流れが悪くなっている状態


瘀血…血流が悪くなり停滞している状態


血虚…血の量や機能が低下している状態


水滞(水毒)…余分な体液が体内に溜まった状態