神経症・ノイローゼ(不安・イライラ・ヒステリー)の漢方薬処方

神経症は心身症より精神面の影響が出る症状で以下のタイプに分かれます。

  1. 不安神経症 … ちょっとしたことで何も根拠が無いのにただ不安になる。
  2. 恐怖症 … 広場、閉所、対人など特定対象への恐怖感が増す。
  3. 脅迫神経症 … 強迫観念が頭から消えず、それに伴う不適合障害がでる。
  4. 抑うつ神経症 … 不安や恐怖といった他の神経症を伴った軽度の抑うつ症状
  5. 心気神経症 … 心身の細かい不調に病的にこだわる。

これらの症状は気滞症とも呼ばれ、精神面ではイライラ、ヒステリー、不安、憂鬱など、身体面では喉の違和感、息切れ、むくみ、動悸などの症状が見受けられるようになります。
主に気のバランスが崩れて起こるとされており、漢方では気滞(気うつ)、気逆、気虚の状態に分けて考えます。

気滞「気分が落ち込むタイプの神経症」

実証の場合で抑うつ、精神不安、肋骨下の圧痛や不快感、ヘソ上の動悸、不眠、頭痛、肩こりなどの症状がある方は「柴胡加竜骨牡蛎湯」。

虚実間証の場合で、何か飲むと喉につかえる感じがある、喉や胸に違和感、不眠、精神不安、几帳面な性格の方は「半夏厚朴湯」、頭痛や不眠、精神不安、食欲不振などの方は「参蘇飲」が候補になります。

虚証の場合で、胃腸虚弱で食欲不振、精神不安、抑うつ症状の方は「香蘇散」、気が沈む、不眠の方は「加味逍遙散」が候補になります。

気逆「頭に血が上りやすくイライラする神経症」

実証の場合で、イライラし不安になる、のぼせや目の充血、鼻血、胃のつかえがある方は「黄連解毒湯」、のぼせ症や胃のつかえ、便秘がある方は「三黄瀉心湯」か「大承気湯」が候補になります

虚実間証の場合で、イライラ怒りっぽい方は「柴胡清肝湯」、イライラし不安になる方は「四逆散」が候補になります。

虚証の場合で、イライラ怒りっぽく神経過敏で不眠傾向や痙攣がある方は「抑肝散」、イライラし不安になり神経過敏、更年期などの方は「加味逍遙散」、それに加えてのぼせや不眠、肩こりなどある方は「桂枝加竜骨牡蛎湯」か「柴胡桂枝乾姜湯」、のぼせ症や立ちくらみ、めまいや動悸、不眠傾向の方は「苓姜朮甘湯」が候補になります。

気虚「気力が無くなるタイプの神経症」

主に虚証の方で、精神不安や不眠傾向、抑うつ、倦怠感、食欲不振の方は「加味帰脾湯」、疲れやすく倦怠感があり食欲不振の方は「補中益気湯」が候補になります。

ヒステリー症状には「甘麦大棗湯」を試して下さい。

 

虚実証とは

その人が生まれながらに持っている要素を「証」として分類したのが虚実証です。


実証
体格・骨格がガッチリしていて、筋肉量も多く、胃腸が丈夫な方。


虚証
体格・骨格が弱々しく、筋肉量も少なく、胃腸虚弱な方。


虚実間証
体格・骨格、筋肉量が普通で、胃腸も問題ない方。


自分が実証だと思う方は「実証~虚実間証」、虚証だと思う場合は「虚実間証~虚証」と判断すると漢方薬の選択が広がります。

陰陽証とは

陽証
冷たい飲み物や寒冷刺激を好む方、風邪で熱が出た時、身体が熱くなる方


陰証
温かい飲み物や温暖刺激を好む方、風邪で熱が出た時に寒くなる方


病気の進行状況によっても陰陽の表現が使われ、症状が強く現われる進行期を陽、病状が落ち着いてきた時を陰として判断する場合もあります。

気血水とは

漢方では気と血と水がバランス良く体内を流れることで健康を保つと考えられています。 「気」は根本的な生命エネルギーを表し、心身の活力や免疫に影響します。
「血」は血液やその機能、それによって運ばれる栄養、ホルモンなどを表します。
「水」は血液以外の体液や体内の水分、リンパ液や消化液、尿や汗などの機能を表しています。


気虚…気の量が不足し活力が低下している状態


気逆…気が上へと逆流している状態


気うつ(気滞)…気の流れが悪くなっている状態


瘀血…血流が悪くなり停滞している状態


血虚…血の量や機能が低下している状態


水滞(水毒)…余分な体液が体内に溜まった状態