慢性胃炎の漢方薬処方

胃炎・胃痛などの胃のトラブルと漢方薬治療は相性の良い組合せです。
基本的には「虚実証」で選択し、個々の症状から合う漢方薬を探していきます。

まずは「半夏瀉心湯」を試す

この漢方薬は虚実間証の方に適用されるものですが、まずはこれを試して効果を薬に聞いてみると良いかもしれません。
吐き気、胸焼け、胃痛に適応しますし、神経性胃炎にも合致します。
みぞおち辺りに痞える感覚や、下痢(お腹がグルグル鳴る)症状がある場合にはさらに合うでしょう。

こちらの漢方薬で効果がいまいちの方は、以下の証ごとの処方を参考にして下さい。

実証の胃炎治療

実証の方は基本的に体力があり身体も頑丈なので、胃炎というと精神的なものが多くなります。
ストレス性胃炎の場合は「黄連湯」を、胃痛や吐き気、のぼせ症状などがある場合は「黄連解毒湯」を試して下さい。

虚実間証の胃炎治療

この証の適応は様々です。
まず、強い腹痛+腹筋の緊張がある方は「芍薬甘草湯」、腹痛のみの場合は「柴胡桂枝湯」か「四逆散」。
お腹に膨満感があり下痢か軟便の方は「平胃散」か「啓脾湯」。
口が渇き吐き気があり、排尿量や回数が減少している場合は「五苓散」か「柴苓湯」、下痢(お腹がグルグル鳴る)や胃もたれがある場合は「胃苓湯」。
胃もたれや吐き気、胸焼け、胃の辺りを叩くとピチャピチャと水音がする、食欲不振などの症状がある場合は「茯苓飲」を選択してください。

虚証の胃炎治療

この証の方は体力が少なく胃腸虚弱の方が多くなりますので、基本的に胃もたれ、吐き気、胃痛などがある前提で処方を選択します。
虚証の方の場合、まずは漢方胃薬の代表薬である「六君子湯」を試してみて下さい。胃の張り、便秘などにも効果があります。
こちらで効果が無い場合は、神経性胃炎、食欲不振にも効果がある「安中散」を試してみましょう。
顔色が悪く、倦怠感や下痢症状がある場合は「四君子湯」があります。
下痢や冷え性、口内に薄い唾が溜まるなどの症状があり全体的に元気が無い場合は「人参湯」を選択し、下痢症状が強い場合は「真武湯」と併用する選択もあります。

神経性胃炎の治療

精神的な要素によって胃炎症状があると自覚できる方は、まずは「半夏瀉心湯」を試し効果が無い場合、実証の方は「黄連湯」、虚実間と虚証の方は「安中散」を試してみましょう。

 

虚実証とは

その人が生まれながらに持っている要素を「証」として分類したのが虚実証です。


実証
体格・骨格がガッチリしていて、筋肉量も多く、胃腸が丈夫な方。


虚証
体格・骨格が弱々しく、筋肉量も少なく、胃腸虚弱な方。


虚実間証
体格・骨格、筋肉量が普通で、胃腸も問題ない方。


自分が実証だと思う方は「実証~虚実間証」、虚証だと思う場合は「虚実間証~虚証」と判断すると漢方薬の選択が広がります。

陰陽証とは

陽証
冷たい飲み物や寒冷刺激を好む方、風邪で熱が出た時、身体が熱くなる方


陰証
温かい飲み物や温暖刺激を好む方、風邪で熱が出た時に寒くなる方


病気の進行状況によっても陰陽の表現が使われ、症状が強く現われる進行期を陽、病状が落ち着いてきた時を陰として判断する場合もあります。

気血水とは

漢方では気と血と水がバランス良く体内を流れることで健康を保つと考えられています。 「気」は根本的な生命エネルギーを表し、心身の活力や免疫に影響します。
「血」は血液やその機能、それによって運ばれる栄養、ホルモンなどを表します。
「水」は血液以外の体液や体内の水分、リンパ液や消化液、尿や汗などの機能を表しています。


気虚…気の量が不足し活力が低下している状態


気逆…気が上へと逆流している状態


気うつ(気滞)…気の流れが悪くなっている状態


瘀血…血流が悪くなり停滞している状態


血虚…血の量や機能が低下している状態


水滞(水毒)…余分な体液が体内に溜まった状態